それは、いつもの昼食風景だった。
佐祐理がこの一言を言い出すまでは………。あまりの突然の佐祐理の申し出を祐一は性格に聞き取ることができなかった。
いや………。
聞き取ることは出来たのだが、 理解することができなかったいうほうが正しいかもしれない。祐一 「今、なんていいました?」
佐祐理「だから、これからは佐祐理のことママって呼んで下さいね」
はい?もしかして佐祐理さん、いきなりスナックのバイトでもはじめるつもりですか?
祐一 「あのー、言っている意味がイマイチつかめないんだけど」
佐祐理「だから、今日から佐祐理が祐一さんのママなんですよーっ」
いや、それでも意味不明………。
佐祐理「ね、舞?」
舞 「………はちみつくまさん」
いや、舞もなぜ状況を理解しているんだ?
SAYURIN☆LESSON(第1話)Script by shion SAKATSUKI祐一 「あの………順を追って説明してもらえると嬉しいんだけど」
佐祐理「ふぇー、佐祐理が祐一さんのママになるのに何か理由がいるんですかー?」
当惑というか、事態を飲み込むのに時間がかかっている………というか何時間あっても 今、祐一に何がおころうとしているのかわからないだろう。
そんな祐一の疑問を舞が一言で切り捨てる。舞 「祐一。佐祐理を困らせるな」
祐一が困るのは別にいいらしい。
祐一 「困らせるなって言ったってなぁ」
佐祐理「あははーっ、じゃあちゃんと説明しますねーっ」
ここで佐祐理はちょっとだけ真顔になる。
佐祐理「前にも言ったとおり、祐一さんは一弥の代わりじゃないです」
祐一 「………」
それは、以前祐一が佐祐理に言ったことだから、祐一は何も言い返せなかった。
あの日、確かに祐一は、
祐一 「あのさ………やっぱ俺じゃ一弥の代わりにはならないか………」
と言った。
そう………、それは
佐祐理「一弥には佐祐理しかいなかったんです」
という佐祐理の気が少しでも楽になればという提案だった………のだが。
佐祐理「だから、私は祐一さんのお姉さんにはなってあげられないんです」
祐一 「あの………それは、別に佐祐理さんの弟になりたいって意味じゃなくて」
という祐一の言葉は当然佐祐理の耳に入っているはずなどなかった。
佐祐理「でも、祐一さんのママにはなってあげられると思うんですよ」
佐祐理「まだ佐祐理には子供がいませんから」
ど、どうしてそんなこと言うかなぁ………と思わず心の中で突っ込みを入れてしまう祐一だった。そーゆー勘違いをするならもっと「でも、祐一さんの彼女さん」になれると思って欲しかった。
しかし、そんなことを意に介さない佐祐理は表情を曇らせて、
「ふぇ、もしかして、祐一さん、佐祐理のママじゃ不足なんですかぁ」
と今にも泣きそうな声で、迫ってくる。………当然、舞の表情が険しくなる。
身の危険を感じて
祐一 「いや、別に佐祐理さんが不足なんじゃなくて………その」
と、言い訳がましくなる祐一。しかし、「不足じゃない」というキーワードに佐祐理は反応した。
佐祐理「あははーっ、じゃ、これからは佐祐理のこと"ママ"って呼んで下さいね〜っ」………誰だ、こんなネタ考えたヤツは(笑)
さて、佐祐理の"ママ宣言"から2時間ほど経過………。
あと5分で今日の最後の授業終了のベルが鳴るというところ。
待ち遠しいはずの放課後だが祐一は頭を抱えていた。
多分教室まで来るんだろうなぁ………佐祐理さん………。
何しろ、
「そろそろ、クラスの皆さんにも顔を覚えていただいたと思うんですけどねぇ」
とか言って、極々自然に教室の最深部の祐一の席まで乗り込んでくるような人が、我が子(笑)となった祐一を迎えに来ない筈がない。その時の祐一が、どのくらい、気が重かったかというと………。
名雪 「祐一、なんか浮かない顔してるけど、昼休みに何かあったの?」
と小声で訊いてくる名雪に、
祐一 「ああ、ありすぎるほどな」
と素で返してしまうほどだった。
香里 「………重症ね」
きーんこーんかーんこーん。
鳴って欲しくないチャイムが鳴ってしまった。
いや、まだだ、この数学教師はいつもなら必ず10分は延長する。
いつもなら腹立たしい限りだが、今日だけは許してやる。
2時間くらい延長してくれ。
そーすりゃ佐祐理さんもあきらめるだろうから。などと考える祐一はまだまだ甘ちゃんである。
仮に数時間かかろうが、こーゆー時の佐祐理が、待っていないはずはないのである。むしろ、すぐにHRが終わってしまえば、佐祐理に踏み込まれる前に、逃げられそうなものを………。いや、そう考えるのまだ甘いか………。しかし、無常にも、
教師 「じゃあ、区切りがいいから今日はここまでな」
こらー、チャイムと同時に終わるんじゃねーよっ。
という祐一にさらに追い討ちをかけるように、
教師 「あ、石橋先生は今日は出張なので帰りのHRはなしな」
なにー、今朝そんなこと言ってなかったぞ、というか今朝いたじゃん。
という祐一の心の叫びは"やった、早く帰れる"という他の生徒の歓喜の声にかき消されたのは書くまでもないことだろう。既に教室後方ドアの向こうには、見慣れたシルエットが………。
それが開いていくシーンは祐一にとっては、さながら恐怖映画の1シーンを見ているようなものだったかもしれない。もっとも扉は、ガラッと一瞬で開いたので………、そんなこと考えている暇はなかったかもしれないが。開かれたドアの向こうに………。
あの………もっと暴走させていいですか?
(続く)
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